『世界リスク社会』U・ベック(法政大学出版局)

§1

■わたしは第1の近代と、第2の近代とを区別する作業を行ってきた。

 第1の近代ということばについては、社会関係・ネットワーク・コミュニケーションが基本的に領土内において行われるという意味として了解される。国民国家に基づく社会に基板とした近代について記述するものとして用いている。

 第1の近代に典型的にみられるような集団的な生活パターン、進歩とコントロールの可能性、完全雇用と自然の搾取は、今ではグローバリズム、個人化、ジェンダー革命、雇用の減少、グローバルなリスク(エコロジーの危機、グローバルな金融市場の衝突)という、相互に関連しあう5つの過程によって浸食されてしまっている。

 第2の近代の真の理論的、政治的な挑戦は、これらの挑戦すべてに対して、社会もまた、同時に応えていなければならないという点にある。(P2)

 

■グローバリゼーションは、国家構造、国家の自律性と権力の弱体化を意味する。このことが、逆説的な効果をもたらしていくのである。(P22)

□政治的にはナショナリズムが維持され、経済のみグローバル化されたのが2010年代の日本の状況である。