『歴史から理論を創造する方法』保城広至(勁草書房)
§1
■時間や場所に限定されない法則主義を、社会科学に適用する場合に生じるもう1つの問題点は、その法則なり理論が未来の社会そのものに影響を与える可能性を考慮に入れていない点にある。(P30-31)
□予言の自己否定性、自己実現性、理論の現象消失性が常に問題となって残ってしまう。
■(中範囲の理論の定義)
ある時代や地域の範囲内において、繰り返し現れる(と考えられる)個々の現象を統一的に単純化・抽象化された形で説明でき、ある程度検証もされている、体系的知識。(P43)
□ここでは、地域限定を、1か国せいぜい2か国に絞ることを提案している。
§2
■科学的「説明」という概念は大きく分けて、以下の3つの意味に分類できると考える。
- それは因果関係の解明であるという意味(因果説)
- それは理論の統合という意味(統合説)
- それはある状態や性質の記述描写という意味(記述説) (P48)
□因果説の前提は「社会現象にはそれを生じせしめた原因がある」というもの。必ずしも歴史事象全てがこれにハマる訳ではなさそう。
□記述説はまさにアナール学派の歴史研究がそのものといえる。因果説とミックスした形(いわゆる解釈学)だと、文化人類学的なアプローチとなる。
§3
■(アブダクション)その推論の方法は、次のようなステップをとる。
- 我々の信念や習慣から逸れるような、変則的な事実が観察される。
- しかし、仮にある「仮説」が正しければ、その事実が生じるのは当然のことであろう
- 従って、その「仮説」が真と考えられるべき理由があるはずである。(P87-88)
§4
■もし自分の主張することに対して具体的な例を挙げて、その根拠とする論者がいれば、我々はその主張を常に疑ってかかるべきである。(P102)
■まず、ある社会現象が観察された際、なぜそれが生じたのかという一般的な問いをたて、その問いを固定化したまま、複数の事例でデータを集積して詳細に分析していく。(P111)