『テクニウム』ケヴィン・ケリー(みすず書房)
§4
□エクソトロピー(exotrophy)・・・エントロピーの逆転
情報と等価ではないが、似ている。
自己整合性(self-organization)を伴う
□情報とはなにか?定義できるか?
□価値の脱身体化 = 物なしの価値(抽象化・非物質化)
■哲学者マルティン・ハイデガーは、内なる現実を「開蔵」つまり露わにするものだと考えていた。その内なる現実とは、作られたモノすべてにある非物質的な性質だ。(P82)
§5
□テクニウムがもたらす歴史的な進歩(というより改良)=年1%くらいの大きさ
①一般人の長期にわたるパラメータの改良(寿命・教育・健康・富など)
②テクノロジー自体の前向きな進展
③①に起因する、選択肢の増加
④道徳=法律などの整備
⑤都市化の進展
■人間の進化に対するよくある誤解は、歴史的部族や有史以前のサピエンスの一族は、平等な正義・自由・権利をもち、調和を保ってきたが、その後それが減少した説だ。(P104)
□上の論の本質は「人間の性質は変わらない」というもの。
実際は、順応性という単語の通り、人間は自分自身を書き換え(Overwrite)ていく。
■換言するなら、科学には、繁栄と人口は必要だ。(P108)
□逆はありえるか?「人口が減ると科学は停滞するのか?」
§6
□「収束進化」
生物学における進化が再起的に発生する。
個々の発展が相互に作用しながら進む。
■進化が必然的に再発へと向かうのは、以下の2つの力による。
- 幾何学と物理学の説明に規定される負の制約(これは生命の及ぶ範囲の可能性を制限する)
- 遺伝子結合と代謝経路における自己組織化する複雑性が生み出す正の制約(これは繰り返し新しい可能性を生み出す)(P129)
■生物学による人間の本性・地位・潜在能力に対する最も偉大な知見は、「偶発性の具現化」という単純な言語に集約できる。ホモサピエンスは、ある実体であり、傾向ではない。(P143)
□適応のベクトル
①環境の最適な適応(=ダーウィン進化論)
②運・偶発
③構造的な必然 ←自己組織化の影響
同様のことが、テクノロジーの進化(=テクニウム)についても検証・実証できるのか?§7に続く。
§7
■(この表を読めば)アイデアは抽象的な形で始まり、時間が経つとより具体的になっていくことがわかる。(P165)
□抽象的なアイデアの段階では、同時多発性が進む。
決して科学/工学の世界だけではない。社会/文化もしかり。
■発明は文化的に決定される。この言い方に神秘的な含意を持たせてはいけない。(P176)
□→必要条件(従前の発明・技術)が揃った時に、新しいテクノロジーがスタートする、という事。
§9
■テクノロジーに関して「必然」を用いるときには2つの意味がある。
第1の意味は、発明が一度は出現することになっている というものだ。
第2の意味は、それが一般に受け入れられ生き残り、もっと実質的に「必然」といえるかどうか、という意味だ。(P201-202)
□後者の意味は重いと考える。そのテクノロジーが社会に浸透した後にふりかえった時に出てくる「必然」だから。
§10
■システムは人間の要求を満たすためには存在しないし、存在もできない。その代わりにシステムの要求に合わせて修正されるのは人間の行動の方なのだ。(P225)
■新しいものを選択肢として与えられて、それを受け入れるかどうか選べるとしても、それは必ずしもずっと選択可能というわけではない。
多くの場合、新しいテクノロジーは、それを使うことを結局のところ強制するように社会を変えてしまうのだ。(P232-233)
□テクニウムの自己拡大性を意味する。
§11
□アーミッシュの多様性の強化
・信仰の基盤は「世に居つつ、世のものではない」
・「何かを使うこと」と「何かを所有すること」を区別
■
- 彼らは選択的だ。拒否する方法を知っていて、新しい物を拒むことを恐れない。受け入れる以上に無視もする。
- 彼らは理論ではなく、経験を通じて新しい物を評価する。新し物好きに自由に使わせて、十分に観察する。
- 彼らは選択を行う場合の基準を持っている。テクノロジーは家族と共同体を強化し、外の世界と距離を置くものでなくてはならない。
- 選択は個人的なものではなく共同体的なものだ。共同体がテクノロジーの方向性を決めて、強化する。
■私は、このテクノロジーに関する2つのライフスタイル、すなわち「満足の最適化」と「選択の最適化」の違いは、人間が目指すものに関する考え方の違いだと考える。(P268)
§12
■リスク回避性向は、理性を失わさせる。(P285)
□結果として、全ての選択を捨ててしまう決定を下す可能性がある。
■要約するなら、新しいテクノロジーの持つ重大な二次的効果は、小規模で厳密な実験や、忠実なシミュレーションの中には存在せず、テクノロジーは実際に動かしてリアルタイムで評価しなければならない。(P290)
■新しいアイデアはまず試してみるのがよい。そしてそれが存在している間は、試し、試験し続けるのだ。(P290)
□「監視原則」>>「予防原則」
■結局のところ、テクノロジー全体は、思考の一形態だ。(P303)